小学校だより 2026年3月

2025.2.28  No.468  校長 山口 旬

いつの日かガムラン

 音楽室の廊下に変な楽器が陳列してあります。黄金色の銅鑼、その銅鑼をお椀のようにして並べたもの、竹を組んで音階ごとに振るアンクルン。これらはインドネシアの伝統楽器ガムランです。

 このガムランはもともとインドネシアの宮廷音楽つまり雅楽のようなもので、民間では古典芸能である影絵人形ワヤンの伴奏音楽として親しまれています。ワヤンは口で説明してもわからないのですが日本で言えば人形浄瑠璃のようなもの。水牛の革で作った大きな影絵人形で、インドの叙事詩マハーバーラタやラーマーヤナを上演する。影絵使いの後ろでガムラン集団がエンドレスに伴奏音楽を奏でます。このワヤンは夜始まって明け方まで上演するのが習わしで、観客は途中寝転がったり居眠りしながら楽しむもの。日本ではなかなか上演されない、というか上演できる人もいないのですが、なぜか我が家には貴重なワヤン人形がずらりとあります。

 私の親がかつてワヤンを上演する日本ワヤン協会というのに入って熱をあげており、私もそれこそ常連で観に行くことが多く、門前の小僧でこちらも造詣が深くなってしまった。十年前にワヤン協会の主宰が亡くなり日本ワヤン協会は解散して上演機会もなくなりました。主宰と家族ぐるみで親しかったので遺品整理を手伝ったおり、引き取り手がなく廃棄処分の危機にあったワヤン人形といくつかあったガムラン楽器を全部もらってきました。だって貴重だし面白いんだもの。もらったはいいが置き場もなく使い道もない。これが断捨離できない人種のハマる道。無用だけれどついついためこんでしまう沼で、いいものだとは知っているが、持っててどうする。で、見たら音楽室の前の陳列棚が空いている、ここに飾ればいいではないか! 世界の楽器に触れる機会という名目で小学校の風景としても悪くない。が、これまで興味を示してくれた児童はほとんどおりません。

 ホントは学校でガムランができたら最高なんですが、そもそも楽器が手に入りません。日本では作ってないし、いちいちデカいし。音程も違うし楽譜もなくそれこそ独特のオリジナル世界です。

 コロナの時に一度だけガムラン演奏団体ランバンサリというグループに来てもらってワヤン上演とガムラン演奏会&体験授業をしました。コロナで行事がことごとくキャンセルになり、またランバンサリも上演機会がなくなり困っていた。だったらうちでガムラン上演&体験を打診すると両者の思惑が一致、ほどほどの予算で実現可能となり、一期一会の企画でした。

 これが面白かった。ガムランはすべて打楽器。楽譜読めなくて結構。パターンを覚えて自分の担当する音だけ叩く。高学年はすぐにマスター、なぜなら本校の高学年はハンドベルの達人ですから。

 「この学校の児童は覚えが早いですね~」「いや実はこの子たちはハンドベルをやってまして。一人一音で合わせるのは慣れっこなんですよ」「あーなるほど、すごい、うちの楽団に入りませんか」

 結構演奏にハマって快感物質を出していた児童もいてその場でスカウトされていましたが、さすがにそこまでのめりこんではくれませんでした。

 ガムランというのは打楽器の集まりで、たくさんの音程の銅鑼や太鼓や木琴鉄琴をタイミングよく打って曲になる。鐘ともベルとも違うあの青銅独特の響きに魅せられる人も少なくありません。これって一人では絶対演奏できないものなので、その神髄はハンドベルとほとんど同じなのです。それこそ心を合わせて打たないと曲にならない。 本校の6年生は間違いなくハンドベルの達人です。日本広しといえども、日常のクラスでこれだけ演奏技術が高い小学生は稀有です。音楽発表会での最後の雄姿は鮮明なる記憶。彼らがガムラン練習したらけっこういいとこまで行くと思うんだけどなあ。それこそガムランで埋め尽くされた教室を完備して日常的に演奏活動する日本で唯一の小学校とか、場所と予算があれば実現したい。

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