小学校だより 2026年2月

2025.1.30  No.467  校長 山口 旬

守るべき価値とは

 先日、音楽特別授業として、メゾソプラノ歌手の上井雅代さんとピアニストの廣田響子さんが来校して声楽の醍醐味を皆で学びました。最初に全員で「ガリラヤのかぜかおるおかで」を一緒に歌いました。この曲は蒔田尚昊(まいたしょうこう)さん作曲。クリスチャンであった蒔田さんはオルガン曲「黙示録による幻想曲」や合唱のためのモテットなどを作曲。オタク界でも有名な作曲家でその名を冬木透といいます。冬木透といえば誰もが知っている曲がこれ「セブン~セブン~セブン~セブン~セブンセブンセブン!はーるかな星が~ふるーさーとーだ~♪」
 ウルトラセブンは、ウルトラシリーズの中でも異質です。ウルトラに「マン」がつかない。胸にカラータイマーがない。そして敵となるのはほぼ全編を通して宇宙人。怪獣はその手下であって黒幕は宇宙人の侵略者なのです。ウルトラシリーズは基本は怪獣退治で、つまり害獣駆除なのですが、怪獣だって人間にとって害獣なだけで、逆にかわいそうな存在として描かれることも多い。対してウルトラセブンの敵はだいたいが地球侵略で、それこそ価値観の違いと地球という領土防衛といった戦争の本質を描いている。人間を奴隷にするという目的の鬼畜な宇宙人も多いけど、なかには地球人のほうがよほど悪いじゃないかというそんじょそこらのドラマより深く重い話も多数存在するので、いまだに大人の鑑賞に値する伝説の番組なのです。かえって小さい子が見たら怖くなるトラウマ回も多数存在し、現在ならもう放送できないようなエグい回もたくさん。放射能汚染がテーマの第12話「遊星より愛をこめて」にいたっては被爆という言葉により放送禁止、完全欠番として再放送もビデオ化もされない幻の回として今や伝説です。
 侵略する宇宙人たちにも都合があり、それぞれの正義をかざして地球にやってくる。人類にとってはそりゃ身勝手だろうという理由だけど、彼らにとっては死活問題。有名なバルタン星人だってもとは故郷を失った難民だったけど、移民として地球を乗っ取ろうとして駆除されてしまうのです。現在の移民や占領問題にもつながるようなセリフの応酬は幼児が見てもちんぷんかんぷんなはず。中でもギエロン星獣とノンマルトの回は人類の在り方をめぐって論文数本書けるほどの濃密さ。(敬意を表して夏の集いのうちわに描いちゃいました) 初期のウルトラシリーズは戦後20年の復興途上であり戦前からの差別感情を引きずって製作しています。戦前と戦後で価値観がここまで変わるのかという葛藤。しかし作品の根底には必ず人類が守らねばならない価値があることを教えてくれるのです。
 ウルトラセブンの最終回、モロボシダンが恋人のアンヌに自分はウルトラセブンだと打ち明ける。
 「僕は、ぼくはね、宇宙人なんだよ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ」
 ガーン! 画面が反転しまばゆい光に包まれてシューマンの慟哭の強烈和音が鳴り響く。子ども心にいつもと違う音楽が覆いかぶさって衝撃でした。最終回の監督はこの場面で絶対にラフマニノフのピアノ協奏曲を使いたかった。ところがレコードを流してみたら、この曲じゃない。曲名を間違えて覚えていた。確かにラフマニノフの曲はあの場面には絶対合わない。さあどうしようと戸惑うなか、冬木さんが選んだのはシューマンのピアノ協奏曲第1楽章の冒頭。クラシックオタクの勝手な想像だけどおそらく当初のお目当てはグリーグの曲だと思う。シューマンとグリーグのピアノ協奏曲は序奏がなく突然の和音強打によるびっくりスタートなのです。こういうのにこだわるのがオタク。
 最近のウルトラシリーズは奥が深く、先月終了した最新作ウルトラマンオメガは、なぜ地球のために戦うのかを問う物語でした。かつて恒点観測のために太陽系に来ていたM78星雲人340号は、度重なる侵略者に苦しむ地球を見ていられずモロボシダンと名乗り地球に残るのです。オメガもあくまで惑星観測員であり、銀河の星々の様子を観察するだけの任務のはずだった。ほかの星は滅亡しても傍観していたのになぜか地球は助けてしまった。地球人に肩入れしてついつい守ってしまった。なぜならそこに守る価値を見つけてしまったから。その守るべき価値とは。
 仮面ライダーは悪に改造された主人公が復讐のために戦う。スーパー戦隊は選ばれしものが悪と戦う。ウルトラマンはよそ者なのに人類に守る価値を見つけてしまって戦ってしまう。番組を見ていると実はものすごく考えさせられる。脚本家が本気になって書いているのがわかる。決して子どもだましではない。この話を6年生にして「ちなみにウルトラマン見ている人は?」…皆無。まあそうでしょう。見ていてもいまさら手を挙げられないよね。

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