2025.01.09 No.455 校長 山口 旬
クリスマス版「蜘蛛の糸」
2025年になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて新年気分ですが、しぶとく続くクリスマスは終わらないPart2です。
1月6日、3人の博士がやってきました。ページェントのラストシーンです。教会では公現日(エピファニー)と言います。クリスマスオラトリオもここがクライマックスです。で、映画ならここからが劇的展開になるはず。と言ってもクリスマスの奇跡映画は星の数ほどありますが降誕そのものの映画って実はほとんどありません。イエスの誕生物語だとだいたいがファンタジーな馬小屋がラストシーンなんですが、実はそこからが物語的には大変なわけでして。メシアなんぞけしからん俺にも居場所を知らせろと言ったのに博士に逃げられ裏切られたヘロデはブチ切れて「ベツレヘムにいる2歳以下の子どもを皆殺しにせよ」というとんでもないR15指定の命令を出し、ヨセフとマリアはイエスを連れてのエジプト逃避行となります。
さて荒野のまんなかで、ヨセフは小さなほら穴を見つけそこで一夜を明かします。そのほら穴の入口に一匹の小さなクモが住んでいました。クモは思いました。
「うわーイエス様だ。本物だ。砂漠の夜は寒いんだよねーあたためてあげなくっちゃ」
急いでほら穴の入口にクモの巣をかけはじめました。あらん限りの力を出して巣をかけました。これまでみたこともないような大きな大きな巣を入口いっぱいにかけました。
「よし! どーよこの見事な巣! こうしておけば冷たい風が吹いても大丈夫だぜ」
いや透け透けじゃん、糸でしょ、冷気素通りでしょ、全然寒いでしょ、なに得意げになってんの、しょせ
んクモの浅知恵~とほら穴の住人のネズミやヤモリやコウモリたちがバカにしています。
そして真夜中、遠くから響く馬のひづめの音。ヘロデの軍隊にちがいない、マリアはすやすや眠るイエスを抱きしめます。見つかったらおしまいだ。赤ちゃんイエスさま泣いちゃダメ!
「おい、ここにほら穴があるぞ。お前、調べてみろ」「へい」 マズイマズイマズイ 万事休す!
ところが、兵隊は入口に立ったまま、入ってくる様子はありません。
「おい、なにやってんだよ、さっさと調べろって」
「隊長、ほら、入口すげえクモの巣っすよ。破れてないからここにはいませんぜ」
兵隊たちは馬に乗り、ひづめの音をひびかせて荒野のかなたに消えて行きました。ほら穴の入り口には
夜露を浴びた大きなクモの巣が月光に照らしだされて、ピカピカキラキラと輝いています。
小さなクモのしたことにマリアもヨセフも気づくことはありません。でもすべてのことを見ていた神さまは、クモの愛の行いを祝福しました。クモは自分にできる精一杯のことをしました。小さなクモの一生懸命の努力と大きな愛がイエス様を救いました。
誰かのために精一杯がんばった行いは、たとえ相手が気づかずとも神さまは見ていてくださるのです。
これはシリアに伝わるクリスマス版「蜘蛛の糸」。クリスマス最後の公現日のさらに後のおはなし。もしかして1月下旬くらい? 今でもクリスマスツリーにはガーランドという金や銀の糸を巻き付けますね。これこそイエス様を救ったクモの糸なのです。そしてヨーロッパでは公現日にガレットデロワを食べます。アーモンドクリームのサクサクパイ。この日にガレットデロワを売るお菓子屋はよくわかってる店です。 先月Netflixで新作映画「マリア」が配信されました。マリアとヨセフの出会いからいかにイエス様を受胎してヘロデから逃げたかという物語で、ページェントの内容が実写化され、たぶん本校児童は「おーあの場面だ」と感じることでしょう。そのうちクモの糸も映画化してくれないかな。