2024.9.2 No.450 校長 山口 旬
読書のススメ
私の小学校時代、夏休み定番の宿題は、自由研究と読書感想文でした。
自由研究は、ある年に例のヒトデで挫折。意気込んでいたのに玉砕。そして一番苦手だったのが、読書感想文です。毎年課題図書なるものがあり、文部省推薦とかいうお墨付きの良い子のためのありがたーい本がまわってくるのです。ありがたーい本というのは、間違いなく私のようなオタクな子どもにとっては縁のない内容でして、興奮と熱狂には程遠く、私のような良い子でない子が喜ぶような展開は望めぬものです。いや、辛かった。正義の味方も悪い奴も出てこない。大人になった今読めば「ふんふん」と興味もわくでしょうが、小学生があんな本ウキウキして読むかね、まったく、お上のなされることは理解に苦しむ、と思っていました。当然面白くないから、感想文なんて苦痛でしかない。お決まりの「感動しました」「スゴイと思いました」の類の文言並べてごまかしていたから、仕事で読む担任もつらかろう。ホント今になってなんですが、誠に申し訳ありませんでした。
そんな私は小学生当時から映画オタクでして、「ネバ―エンディングストーリー」という映画を観てその内容にハマり、2800円もする分厚い原作本ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」をチラと読み始めたら止まらなくなりました。読後はなにげに感動。そこからかな、「読書って、悪くないな」と思い始めたのは。続いて、なんとなく読み始めた「二年間の休暇(15少年漂流記)」(のび太も出木杉君に薦められてハマっていた)からジュール・ヴェルヌなら何でも読んでやろうと「海底二万里」「神秘の島」など読み漁り、内容によって読書に抵抗感がなくなりました。
映画は小学生の時から人の数十倍は観まくっていたので、私の場合は映画の原作本が読書のとっかかりです。映画のノベライズや原作文学、高校生になるとシェイクスピア全巻読破、カフカ「変身」カミュ「異邦人」、背伸びしてドストエフスキー(映画で内容を把握、でも当然途中でリタイア)。そこまでくるとほとんど「読んでる俺ってスゲェ」という自己満足でしたが。でも、その蓄積は今でもたまに役立ちます。今年の夏のつどいのうちわの裏の絵は、その幅広いオタクの知識がないと解けませんよ。ふふふ。
人類は読書を通して知のリレーを行い、数千年の進化を遂げて、恐ろしいまでに発展してしまった生物です。社会で生きるにも、世界を救う手段も滅ぼす方法も、すべて読書をすることで知識が蓄積して成し遂げることができるのです。今はICTやAIなどがありますが、最終的に人の知性が未来を左右します、絶対。人として生きていくために必要な力が読書にはあります。きっかけは人それぞれですが、様々な体験や習慣を通して、読書の習慣を身に着けていってほしいと願います