小学校だより 2025年10月

2025.9.30  No.463  校長 山口 旬

ガス電気水道トイレのない生活

 今年も文化祭でバングラとタイの店を出しました。現地の品物を並べるだけでウキウキしてしまいます。
 バングラデシュとミャンマーに出かけたのがきっかけで東南アジアにハマり、海外旅行と言えばアジア圏ばかり。そのアジアの中でも極めつけヘンテコ体験と言えばラオス。ラオスは東南アジア観光としては日本では最もマイナーな国。人が行かないところへ行きたいタイプの私はどんな僻地に行ってやろうかと「地球の歩き方」をペラペラめくっていると、「ガス電気水道トイレもない山岳民族の村にホームステイ」という特集が見開きでジャジャーンと掲載。これは面白いと仲間を誘うもそんなサバイバルもどきのツアー何が楽しいのと誰も興味を示さず、唯一乗ってきたのは教会仲間の「横須賀の母」。ツアー2人分をメールで予約し、格安航空券でラオスの世界遺産ルアンパバーンへ飛ぶ。10年前はここまで円安ではなかった。

 ルアンパバーンは小さい街で10分歩けばもう山。現地ガイドと市場で食材を買い、林道から山道に入り車の通れないジャングルのような何もないホントの山道を歩くこと2時間。虎が出てきてもおかしくない獣道。着いたところはドキュメンタリー番組みたいな掘っ立て小屋の並ぶ山岳民族モン族の村。モン族は世界の少数民族の中でも風貌が日本人そっくりなので違和感がない。人口約200人で、超久しぶりの観光客だそうな。地球の歩き方の見開きページなんだからさぞかし人気のツアーなんじゃないの? いや、あなたがツアー開始以来数年ぶり二人目の客です。聞けば日本語ガイドの実家の村で、物好きな観光客が行きたいって言うので試しに作ってみたツアーなんだそうな。だからマニュアルなど無くとりあえず泊まるだけ。で、今夜はこの家ねと農家に案内され、じゃあ今からベッド作ろうかと山に入って竹を数本切ってきてその場でDIYの簡易ベッド(ベンチ?)作り。今夜は布団もなく(あってもダニだらけだろう)竹ベッドにごろ寝。地べたでないだけマシか。

 夕食はロウソクの灯りの下、土間の釜に市場で買ったモツ煮込みを中身のわからない怪しい鍋に足す。暗くて何食べているかわからない。小さな頭蓋骨発見、なんの頭だろうねえとかじってたらガリっと鉛玉。「ああ、散弾銃で取った野ネズミ」 あぶないあぶない、飲み込んだら鉛中毒になっちゃうよ。水浴びは井戸水。村にトイレはなく、外の草むらで用を足す。200人の村人が毎日そこらでウ○チしてたら周りは大変なことになるんじゃない? いや家畜の豚と犬が全部食べるから大丈夫。で、その豚を人間様が食べるので見事な食物循環です。もう楽しくてしょうがない(私だけか?)。住みたくはないけど。

 こういう体験をすると、普段の生活がいかに恵まれているかわかるし、ないもの体験をすることによって日常の中に感謝する心が芽生えるものです。不謹慎な言い方ですが、避難所生活を経験すると以後の生活に日常に対する感謝の念が生まれるといういいます。ちなみにルアンパバーンのホテルのお湯は出ず、この旅の道中はお湯無し生活でした。

 修学旅行に行ったら、やれドライヤーが家と違うだのターボがないだの、夜パックだアホ毛直しだと、これまで小学生では存在しなかった単語が行きかい隔世の感に口がパクパク。郷土料理に「これは食べたことないから食べません」「いや初めてを経験するメニューなんですが」 野ネズミの丸焼きを楽しく食べた自分はやはり特殊な人種なのかしら(たぶんそう)。

 あまりに便利な道具と、細かすぎる知識を得た人類は、どんどん免疫力を失います。清潔な物しか触れたことのないまさに無菌状態でないと生きていけない人のなんと多いことか。土を「汚い」と思う人々少なからず。もはや和式トイレを使えない人も大勢。大人も子供もスマホなしでは生きていけない。でも今頃モン族の村も近代化で圏外ではなくなっているかも。

 ないから文句を言うのではなく、あったことに感謝できる人になりたいしなってほしい。水道の水が当たり前な国に生まれて感謝しましょう。食事の無限の選択肢に感謝しましょう。この日常の中ではわかっちゃいるけどなかなか難しい。

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